2010年03月06日

海老沢泰久『監督』

勝利は自分で、自分のためにつかむもの。
監督 海老沢泰久著/文春文庫

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 プロ野球チームの監督といえば、男なら一度はやってみたいといわれるほどですが(最近の若い人はどうかわからないけど/笑)、いったいその地位、その役柄にはどんな魅力があるのでしょうか。海老沢泰久氏の小説『監督』は、世の男性たちを惹きつけてやまない、監督という生き方を、野球の面白さをふんだんに盛り込んで描いた「スポーツ小説の金字塔」といわれる作品です。

 万年最下位で、マスコミからも“ドンケツ・エンゼルス”と嘲笑されるプロ野球球団、エンゼルスは、その年もシリーズ中盤にさしかかったところで首位のジャイアンツから26ゲーム差の最下位で、しかも現在9連敗中。そんななか、何とか選手を奮起させようとオーナーの岡田は球団社長をひきつれて球場に観戦に来るのだが、そのオーナーの目の前でまたもやジャイアンツにこっぴどくうち負かされてしまう。エンゼルスは6連続安打で1点も取れないほどの、どうしようもないチームだったのだ。
 自チームのあまりのふがいなさにすっかり不機嫌になってしまったオーナーにふと、球団社長は提案する。「監督を変えてみてはどうでしょう?」
 かくて、エンゼルスでヘッドコーチを務めている広岡達朗に白羽の矢が立つ。マスコミも、この決定に色めきだった。広岡達朗といえば、かつて長嶋茂雄とともにジャイアンツで活躍しながら、監督だった川上哲治との折り合いの悪さから退団に追い込まれたという因縁がある。その彼が監督となって、長嶋巨人に立ち向かうというのだ。しかしその前に、広岡には戦わねばならない“敵”がいた。それは最下位という位置に慣れっこになって、戦うことを忘れているエンゼルスの選手たちであった---。

 エンゼルスという架空の球団を率いる実在にして架空の「広岡達朗」という人物を描くこの作品。舞台は長嶋茂雄氏がジャイアンツで1度目の監督を務めた頃で、登場する選手もエンゼルスの選手以外は巨人の王、柴田、張本、小林、西本や阪神の田淵、中日の星野などすべて実在の人物になっています。加えて著者の野球に対する知識の豊富さと慧眼、そして何より野球を愛する心が、ほんとうの野球の面白さ、そしてあるべきプロ野球の姿をも、「広岡達朗」を通して教えてくれているようです。
 ドライでシャープでちょっぴりコミカルな文体で、野球をよく知らない人でも一気に読み通せる面白さ。野球のみならず、人生の上で大切な「何か」を思い出させてくれる一冊です。
posted by 飛田カオル at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 野球
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