2010年01月01日

マネー・ボール

「マネー・ボール」
 マイケル・ルイス 著/中山宥 訳 ランダムハウス講談社

メジャーリーグの貧乏球団、オークランド・アスレチックス。ゼネラル・マネージャー、ビリー・ビーンは画期的な球団運営方法を導入し、選手年俸の総額はヤンキースの3分の1という状態のままで、必ずといっていいほどプレーオフに進出できる常勝チームへと変貌させていく、というスポーツ・ビジネス・ノンフィクションです。とにかく、とーーーっても面白かったです!

野球というのは、世にも不思議なスポーツです。その試合の記録を見れば、試合を見なくても、実際に試合を観たかのようにリアルに文章化することができます。選手の成績は、どんなことでも数値化できます。グラウンド上で起こったすべてのことをデータ化し、それを分析することによって、これまで経験則から野球の専門家(監督、コーチ、選手たち)が培ってきた常識とは別の、新しく、より正しい野球理論を打ち立てることができる、と提唱した人がいました。ビル・ジェームズという人です。彼によって提唱された、統計学的野球戦略解析手法を「セイバーメトリクス」と言います。

ビリー・ビーンは、野球の“ファイブ・ツールズ”足、肩、打撃力、守備力、長打力すべてを兼ね備えた、才能あふれる若者でした。ただ、本人はプロ野球の道を歩むより、スタンフォード大学に進学してフットボールをする方を選びたがっていました。しかし、契約金に彼の心は動きます。そして、野球選手になりました。スカウトは誰もが、彼が一流のメジャーリーガーとなって名を残すだろうと思いました。しかし、実際にはそうなりませんでした。彼には野球の才能はあったけれども、「プロとして」野球をし続けて行く能力に欠けていたのです。

これは、そんな失敗した元野球選手が、かつて自分を評価したスカウトの人々とはまったく違った視点…「セイバーメトリクス」を武器にして、これまでスカウトたちが評価してこなかった種類の選手を(それゆえ、安い金額で契約できる)発掘し、チームを再建することによって自分の人生を取り戻してゆく…。ロマンティックに表現すれば、そんな物語なんです。

「野球は、確率論的な思考を促す連続メロドラマなんです」。本の中で紹介されている言葉ですが、この本もまさしくそんな感じです。どうすれば効率的に得点できるのか、という観点で選手を評価し、株を売買するようにドラフト、トレードしていく冷酷な辣腕ゼネラル・マネージャー。でも、そのストーリーの底流には、メロドラマがあるのです。野球がそうであるように…。
posted by 飛田カオル at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書録
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